よくある話をします。
昔、こんな絵本を読みました―
幼い頃からずっと一緒にいた、犬と猫の兄弟がいました。
兄弟とはいっても勿論同じ腹から出てきた兄弟ではなく、二匹がまだ生まれて間もない頃に、飼い主がペットショップから買ってきたものです。
二匹は食べるものが違い、遊び方の好みも少し違ったので、喧嘩することもなく、幸せにすくすくと育ちました。
そんなある日、二匹は、気がつくと、暗闇の中にいました。
遠くに光が見える。
犬がそちらの方に駆け込むと、急に視界が開けて、そこは何の変鉄もない外の世界でした。
猫が遅れて犬の元にやってきます。
そこは、今まで家の中で飼われていた二匹には全く関わったことのない世界でした。
その強い光、と共に存在する暗い影。陰は、少し、ひんやりとしていました。どこかから、水の音が聞こえる。床は、少しゴツゴツとしていましたが、それはまるで遊具のよう。
犬ははしゃぎ回ります。
猫は何も言わずに、それをじっと見つめていました。
すると、突然、犬の姿が消えました。
猫は、ほんの少しの間、息を止めました。
どこかから、水の音が聞こえる。
床は、少しゴツゴツとしていましたが、それはまるで遊具のよう。
猫は、しばらくそこに立ち尽くしていました。
しかし、しばらくすると、猫は何も言わずに、反対方向に、歩き始めました。
少し、猫は、おぼつかない、足取りでしたとさ。
ーーーーー
という、
これは、
これは、全部妄想です。
こんな、人が、演出をやっています。
よかったら。
「新人公演だからこんなもんか」なんて、
言わせないです。
演出・野口瑞貴
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劇団綺畸2016年度新人公演
『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』
作 中石海 演出 野口瑞貴
3/18(土) 19:00
19(日) 14:00/19:00
於 駒場小空間
全席自由席
予約不要・カンパ制
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薔薇の名前
ぼくが子どもの頃に読んだ本は、すごく普通のものばかりだった。
ズッコケ3人組とか少年探偵団とかその辺りの本を、近所の図書館で毎週借りて読んでいた。 シリーズものがズラーッとならんでる棚の前を歩きながら、おもしろそうなタイトルのものをひっぱりだして、閲覧スペースに置かれている子ども用の椅子に座って何ページか読んで、おもしろかったら借りて、家で読んだ。
しばらく経っていつのまにか、本は借りずに買って読むようになった。
そのせいで図書館からは足が遠のいてしまって。
でも、何年か後にふと図書館にいって、あの子ども用の椅子を見たとき、あれ、と思った。
こんなに小さかったっけ?
あるいは。
初めて読んだ子ども向けじゃない本は、重松清の『卒業』だった。
とても気に入って、それからしばらくは重松清ばかり読んでいた記憶がある。
何年か経って、あの本よかったな、と思いながら読み返す機会があって、やっぱり、あれ、と思った。
こんなに短い本だったっけ?
成長といえば、広く一般に奨励されているけれど、なぜかしらさみしさがつきまとう。
でも、そのさみしさも承知の上で、やっぱり成長したいと思う。
自室の椅子に座って、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を読みながら考える。
これから何年か経って、今座っている椅子が小さく感じられることはもうないだろうけど、今読んでいる本が短く感じられることはあったらいい。
作・舞台・小道具 中石海
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劇団綺畸2016年度新人公演
『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』
作 中石海 演出 野口瑞貴
3/18(土) 19:00
19(日) 14:00/19:00
於 駒場小空間
全席自由席
予約不要・カンパ制
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