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嫌なやつ


「将来はなにになりたいの?」という、大人が子どもに聞くあの質問。
あの質問に対して、なんとなく空気を読んで答えてしまう、嫌な子どもだった。
深いことは考えずに好きに将来を想像すればいいものを、将来というものの途方もなさへの遠慮から、それがなんとなくできなくて、質問した大人がどんな答えを期待してるかだけは想像してしまう、そういう子どもだった。
質問されるたび、自分がなにになりたいと思ってるのかはわからないままに、とりあえず何か答えなきゃいけない空気を感じ取って、数学者とか物理学者とか小説家とか、その時々で答えを変えていた。

何年か経って、僕はさらに嫌なやつになった。 空気を読んで質問に答えることの無意味さを感じてしまって、「将来の夢は?」という質問に、「未定」と答えるようになった。
さらに何年か経って。
将来のことなんてわからないのだから、その時その時でやりたいこと、意味のあることを選んでいれば、いずれ将来に辿り着いたときに後悔はないんじゃないかと思うようになった。
そう思えるようになったのは、20年間なんやかんや自分のやりたいようにやってきたけれど、今までの自分にも今の自分にも後悔がないから。
依然として将来の夢は未定のまま、けれどほんの少しだけ前向きになって、ほんの少しだけ嫌なやつじゃなくなった。
ほんとにほんの少しだけど。

なぜ演劇を始めたのかと聞かれたら、演劇をやりたかったから。
なぜ綺畸に入ったのかと聞かれたら、綺畸に入りたかったから。
将来どう役に立つかなんて考えず、その瞬間に意味のあると思えたことを、その瞬間にやりたいと思ったことを、選んだ。

いまのところ後悔はないです。
けれど、この公演が終わったときにも後悔がないかどうかはわからない。
これで失敗しても後悔はない、なんて言うには多過ぎるほどのものをこの劇のために使ってしまっているし、劇団員に迷惑をかけてしまっている。

とはいえ、たかが1ヶ月、たかがサークル、たかが学生演劇。
若いなあ、青いなあ、なんていう大人たちの声が想像できてしまうくらいには、僕はまだ嫌なやつなんだけれど。
そんな想像をしつつも、脚本を書いたり舞台を叩いたりしてしまうくらいには、嫌なやつになり切れない。

まだわからない、と言いつつ、公演後も、後悔はないときっと言える。
そう思っています、今のところは。


なので、ぜひ観に来てください。


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劇団綺畸2016年度新人公演

『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』

作 中石海    演出 野口瑞貴

3/18(土) 19:00

19(日) 14:00/19:00

駒場小空間

全席自由席

予約不要・カンパ制

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