雪の本棚


中学生くらいまで質より量を重視して濫読してきた。とにかく、読んで、読んで、読んだ。特に印象的だったいくつかの本は特殊な織物を織るために働かせられる子どもたちの話、死ねない男の放浪記、といったように思い起こすことはできるけれど、名前までは思い起こせない。たぶん、繰り返し読んで没頭する本はほとんどなかったのだろう。なので、すこし趣向を変えて私の読書の原風景の話をしたい。

雪に閉ざされた山の、その子供部屋。扉ほどの大きさの本棚。その中にはぎっしりと本が詰まっている。ひたすら本を読んで、飽きたら雪を見ての繰り返し。私の一番古い記憶のひとつだ。

本棚の中身に大きな変化はなかったけれど、歳を重ねるにつれ本棚の中から手に取る本は変わっていった。最初は「ぐりとぐら」や「ばばばあちゃん」などの絵本で、5歳くらいにはたくさんのふしぎシリーズ。このシリーズが家とその周りに限られていた当時の私の世界を一気に押し広げてくれた。小学生の頃には手塚治虫マガジンやナショナルジオグラフィック。手塚作品は今でも好きで、折を見ては買い集めているし、わからないながらに熱帯魚や毒物の特集を読むことは好奇心を刺激してくれた。

それぞれの本をそのときそのとき、心ゆくまで読んでしまったからその本を読み返すことはもうほとんどない。けれどそれは確実に今に繋がっている。

 

あれから転々と住処をかえてきたので、あの本棚を使うことも年に一度あるかないかくらいになった。けれど、本を読んでいるときの時間の流れ方は今も昔も変わらない。雪の降る日は、特に。今手に取るどの本も、ある日の雪の本棚に繋がっているような、そんな気がする。


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劇団綺畸2016年度新人公演

『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』

作 中石海 演出 野口瑞貴

3/18(土) 19:00

19(日) 14:00/19:00

駒場小空間

全席自由席

予約不要・カンパ制

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