消える光をずつと見る
演劇は、舞台上で起こることは、起こったそばから消えてゆく。そして舞台も公演が終われば材木に戻る。ぜんぶ消えてしまうものが限られた回数だけ外に開かれる。だから観に行くような、そんな気がする。
文芸をしている。書かれたものは読み返すことでじわじわと染み込むものだと思っていた。それはそれで好きだった。けれど同時に鮮烈なものに憧れる気持ちがあった。ことばとからだを使う一度きりの表現のことがいつも気になっていた。一時期寺山修司が好きだったことや、平田オリザの本や中村勘三郎の追悼本を読んだことも関係あるのかもしれない。
上京してから、演劇のことが気になりつつ、大学では俳句をやると決めてそれに関わることを意識的に避け続けていた。7月。誘われてままごとの「わが星」を見に行った。衝撃だった。演劇に作り手として関わりたいという気持ちが芽生えたものの、現状俳句で精一杯なのでこのまま関わることはないだろうと思っていた。
2月。ひとつの転機。 文三劇場ならできるかもしれないと思った。そこで劇が作られるまでの段取りを知りたかった。折りよく募集をかけていたESSの新人公演の座組に入った。
4月。台本から作る劇に関わりたいと思う最中。俳句会の新歓でサークルオリエンテーションに来ていた。知り合いがいたなと思い、綺畸のブースを覗く。魔が差したように。いろいろと過去の資料を見せてもらい、ブースを去る頃には思い切って入団することにしていた。
いろいろと書いたけれど、どんな背景があっても、誰がやっていても舞台上で起こることが全てだと思う。重要なのは理由ではなく、今演劇をしているということ。そしてそのうえで何を見せられるかなのではないだろうか。
座組の面々の演劇を始めた理由よりも、私たちが打つ劇を見てほしいのだということが正直な気持ちです。消えてしまう前に。
役者・小道具 青本
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劇団綺畸2016年度新人公演
『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』
作 中石海 演出 野口瑞貴
3/18(土) 19:00
19(日) 14:00/19:00
於 駒場小空間
全席自由席
予約不要・カンパ制
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