アンパンが一番安かった。
中学一年生の春でした。
新しい生活が始まることにわくわくしていた私は、購買でパンを買えちゃうことにもわくわくして、お弁当をしっかり食べたにも関わらずアンパンを買ってみちゃったりして。中1の胃袋には多かったんですよね。
演劇部の仮入部に行ったら発声の先生は新入生が来ていることに気を良くして、腹式呼吸なんて意識したことのない私にも一生懸命教えてくれました。初心者にはちょっとハードだったんですよね。
勢いよくリバース。
まだ消化されていなかったみたいで、出てきたものが元はアンパンだったんだろうなって想像がつくんです。やっちまったと思いました。
今思い返しても信じられません。仮入部に来た1年が真っ青になって吐いた。先輩たちもびっくりですよね。
私がゲロ〜っとやった後の先輩たちの動きは見事でした。雑巾持ってきて、この子を流しに連れて行ってあげて、誰か上着を着せてあげて。
素早い指示と素早い対応。素晴らしい。私は先輩たちからめっちゃお世話されて帰宅しました。
念のためと付き添いでついてきてくれた高1の先輩と二人で帰りました。雑談として他にどんな部活に入ろうと思ってるのって聞かれます。吹奏楽部が気になってますって答えます。
答えたけど、こんなに迷惑かけといて今さら違う部活には入れませんよね。
お昼にアンパンを食べたから、私は演劇を始めました。
佐藤晴香
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劇団綺畸2016年度新人公演
『無題、あるいは歪曲するガラスケースの寓意。』
作 中石海 演出 野口瑞貴
3/18(土) 19:00
19(日) 14:00/19:00
於 駒場小空間
全席自由席
予約不要・カンパ制
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